第7回生産宣言者インタビュー(百草園)
有機無農薬の百草園 間(はざま)司さん
有機農業で作られた無農薬野菜を全国の食卓へ
34年前、東京から新規就農のために熊本市植木町に移り住み、露地栽培での有機野菜作りと平飼いの採卵養鶏を営む『百草園』。くまもとグリーン農業では、有機農産物で生産宣言をされています。東京にいた頃、消費者の一人として無農薬野菜の共同購入をしていたことが、新規就農のきっかけになったそうです。当時は有機栽培をしている生産者の数は限られていて、生産者の元に通いながら交流を深めるうちに、有機農業の魅力を知り「安全・安心な野菜を自分たちの手で栽培しよう」と決意したそうです。さらに近年では、奥様の澄子さんが環境省の環境カウンセラーに登録し「環境と農業」「リサイクル」等の視点からも活動されています。
新規就農でも安心できる有機農業研究会の存在
百草園では年間を通して約60品目の野菜を露地栽培で育てています。化学肥料や農薬を使わずに栽培された、有機JAS規格の有機農産物の野菜です。「就農した頃は勉強する場がなかったので、自分で家庭菜園をやってみたり、近所のおじいちゃんたちに昔ながらの作り方を聞いたり、基礎知識を持つ農協の技術指導員に教えてもらったりしていました。」その後、間さんは有機農業をしている生産者たちで結成された熊本県の有機農業研究会に入りました。産地訪問をしてお互いの畑を観察したり、種や苗を交換したり、やり方を教えてもらったりしながら、だんだんと有機農業の技術を身に付けていったそうです。「有機農業研究会があったからこそ、初めてでもできたと思っています。」と間さんはおっしゃいます。
生産者と消費者が一緒に育てる有機農業
1986年に「千草会(ちぐさかい)」という消費者の会を立ち上げ、会員さんに直接、安全で安心な野菜を届けています。「会員さんは何かを作りたいから買うのではなく、届いた野菜を見て献立を考えるようになります。それを1年続けると、旬のものを身体で覚えるようになっていきます。」
さらに、間さんは、会員さんに情報を届ける努力を惜しみません。定期的に産地を見に行ったり、料理教室や自然観察会などを開いたりしているそうです。「お店で買うのとは違うからこそ、交流を深めていくことが大切なんです。」間さんは“環境にやさしい”農業とともに、“食べること自体が環境を守る”という農業のあり方を広げていこうとしていらっしゃいます。そこでは、単なる売り手と買い手ではない“一緒に歩んでいく”関係が築き上げられている、とのことでした。
有機農業を通して出会ったくまもとグリーン農業
生産宣言をされたのも、有機JASの認定を受けた農家を定着させ、広げていくことが一番の目的だったそうです。現在は、熊本県有機農業研究会により、県下の有機農業を行っている人たちから栽培技術や経営の情報を集め、整理して、新規就農の方でも有機農業に取り組みやすくなるような資料を作っているそうです。「農村は外部から人を招かないと成り立たなくなってきています。新規就農者には有機農業を望む方が多いので、その人たちのために活用されると良いですね。」また、くまモンが使われているくまもとグリーン農業マークと合わせて有機JASを表示すると、一目で熊本県の有機農産物だと分かり、消費者へのアピール力が大きいそうです。「今後は都市部を中心に県外に広まるように、マークの表示を行っていきたい」と語ってくれました。間さんのお話を伺っていると、全国に有機野菜を推進する輪がますます広がっていくように感じました。